2011年3月23日
九州スポーツクラブ協議会 共催セミナー
社団法人日本フィットネス産業協会 杖崎 洋氏
音楽使用料支払い義務について
今回の音楽使用料支払いについて、一番多くいわれるのは、「私たちが使っているのはほとんど洋楽ではないか。洋楽なのに、なぜJASRACという日本の組織に払わないといけないのか。払ったお金は本当にアーティスト本人のところにいくのか」というものがありました。
また、JASRAC側にも問題がありましたが、「フィットネスクラブとの間で、このような料金規程ができました。ついてはスイミングスクールの皆さんもよろしくお願いします」というように、日本スイミングクラブ協会には一方的と捉えられる通知をしてしまったんですね。それにより、スイミングの皆さまから非常に強い抗議と非難を受けたようです。しかし、基本的にアクアビクスをやっているところ以外、スイミングスクールだけを行っていて、準備体操などのときに簡単な曲を使っているだけのところは全部除外となっています。
実はJASRACもフィットネスという業界を熟知して規程を制定したわけではなく、手探りで行っているのです。ですから、気になる点があったらどんどん伝えていただいた方がいいと思います。
なぜ支払い先が日本組織(JASRAC)なのか?
話は戻りまして、先ほどの「洋楽なのに、なぜ日本のJASRACに」というところをまとめておきましょう。JASRACのような音楽著作権団体は世界各国に存在します。そして各国の音楽著作権団体は、お互いに相互協定を結んでいます。海外に郵便を出すときでも、日本の切手を貼ってだしますよね、あれも日本と海外の郵便局でお互いにやり取りをしているからです。それと同じように、各国の音楽著作権団体と、日本ではJASRACが代表として相互協定を結んでやり取りをしているため、使っているのは洋楽であっても、費用はJASRACに払わなければいけないのです。
支払いまでの流れについては、1月31日付けで、JASRACから皆さんのもとへご案内が届いたと思います。FIAに加盟しているところには、去年の春先から何度となくいろいろな資料をお送りさせていただきました。加盟企業の場合、経営者のところに1通だけ資料をお送りしていますので、各クラブにはお送りしていません。しかし、JASRACは全国約8,000の施設を調査して通知を発送しました。そこに手続き方法については書いてありますので、すでに対処されているところもあるでしょう。
たぶん最初に届いた案内は、「…こういう手続きがこれから必要になります。あなたの施設では、音楽を使用したレッスンをしていますか?」という質問だったと思います。これに、「使っている」と返事をすると、手続き書が送られてくるという流れだろうと思います。FIA加盟のところについては、基本的には「対象であ
る」ということを前提に、手続き書類を送付しています。
どのように音楽を使用すると、使用料を支払わなければならないのか?
一般的に考えられる音楽の使用法は、自分で聞くために音楽をコピーやダビングする、そのような“私的利用”ですね。今回はこれ以外の状態のことを指します。つまり、営業目的で音楽を使用すること、音楽をかけてスタジオの中でレッスンをすることです。またストレッチエリアで、エンドレスでストレッチDVDを流している場合がありますが、そのDVDにBGMを入れこんで、ずっと流し続けていると、これも適用対象になります。
営業として、または指導の場面で音楽を使用する場合は、すべて適用になるのです。
しかし、有線放送による館内BGMや放送中のテレビ番組から流れている音楽は、支払いの対象ではありません。有線を扱う会社から配信されているBGMについては、事業者の方で元栅処理をしてくれているのです。ですから、それを流しているクラブは支払う必要がありません。しかし、有線ではなく、支配人が自分の好きなCDをBGMとしてかけていたら、それは使用料を払わないといけません。このように、“BGMであれば適用されない”というわけではなく、すでに権利処理をされているBGMのみ、適用外となります。
使用料は誰が支払うのか?
これは、クラブの施設運営者が払う義務を負うことになっています。それは、フィットネスクラブの指導において音楽を流す場合は、フィットネスクラブ全体を管理している運営者が音楽を使用した者とみなされるからです。再生しているCDがインストラクターがもちこんだものであってもです。クラブ経営者からすると、「業務委託契約先であるインストラクターが自分でもちこんだものであり、レッスン料、つまり業務委託費
用も払っているので、インストラクターが負担すべきだ」という見方もありましたが、支払うのは契約主体者、つまりは施設運営者となります。
その理由は、1.営業を管理支配している、2.利益が帰属している、の2つであり、さらに、他業界
での事例や判例の積み重ねによっても決められています。
では、“営業を管理支配している”とはどういうことでしょう。
実際の指導用音源の構成について、クラブの経営者が指示し、内容について管理しているということはほとんどないでしょう。しかし、例えば「この施設でアクアビクスのレッスンを行う」という設定を行っているのはクラブであり、「このレッスンは止めよう」や「このスタジオをつぶしてほかのコーナーにしよう」というクラスやスタジオの改廃を決めているのはクラブですね。また、2については、演奏料でいう“利益”とは、音
楽を演奏することで入場者が入る、入場料を得ている者の利益を指します。スタジオでレッスンをするから会員が入り、その会員が払っている費用は入場料である、ということです。
当然別の考え方もあると思いますが、これらはさまざまな業界で行われた協議や判例で形成されてきたルールなのです。
使用料算出方法について
使用料金額は、JASRACの使用料規定によって算出されています。これに基づき、月額使用料を算出してください。その使用料というのは、フィットネスクラブのなかで音楽を使用している場所の面積と、後でご説明する月会費の額に基づいて決まります。
面積は、その施設のなかで音楽を使用している面積を合計したものです。月会費は、全営業日、全営業時間利用できる利用者の月会費です。
会員種別には利用時間が指定されていたり、学生さんしか利用できないなど、いろいろなものがあると思います。そのような、曜日や時間が制限される種別ではなく、通常誰でも登録できて、全営業日、営業時間に利用できる方の月会費を指します。使用料規定には会費と面積に応じて各クラブが支払うべき1ヶ月あたりの料金が記されています。
手続きの手順について、企業とJASRACの間で交わす書類は2種類です。それは「音楽著作物利用許諾契約申込書」「利用状況届出書」の2つです。届出書の方で、各クラブの音楽を使用する面積や該当する会員種の月会費を届け出ることで、一覧表から月額の使用料が求められるようになります。
なぜ2011年から支払い義務が課せられたのか?
「なぜ今まで払ってなかったのに、急に2011年から払わなければならないのか?」という質問はたくさんの方からいただきました。著作権法というのは昭和45年に成立し、「著作物については、正当な著作権者に対して著作物使用料を払わないといけない」ということが決められました。しかしそうはいっても長年の社会の慣行をすぐに変えることはできなかったため、ここに特例ができていたのです。これが1999年に廃止され、
2000年からは基本的にはどんな著作物にも支払義務があったのですが、JASRACが制度を備を整える作業に時間がかかっていたために実行が遅れていたという事情があります。
正規のCDを使用しても支払うのか?
“正規のエクササイズCD”とは何かというと、例えばおとやトレーディングさまや、ブラボーグループさまで販売しているCDのことです。それらのCDを見ると、「このCDは正当に著作権の処理がされていますので、エクササイズで使用できます」と書いてあります。しかし、さらによく見ると「ただし、利用にあたっては演奏料などの処理が必要になることがあります」と書いてあります。
著作権はいろいろな権利の総称であり、先の「著作権の処理」の「著作権」とは、例えば録音権や複製権な
ど、作詞家、作曲家などがもっている権利の一部を指しています。ほかには、インターネットなどにのせて配信することは公衆送信権に関わります。このようにいろいろな権利があるのです。著作権のほかには著作隣接権などもあり、本当によくこんなにたくさんの著作権があるものだと感心してしまうほどです。
今回問題になっているのはそのなかの“演奏権”であり、インストラクターの皆さんがお使いのCDなどに書いてある「正当に処理されている」著作権というのは、“録音権”について処理されているということであって、“演奏権”については処理されていないのです。ですから、演奏権料については使用者が払わないといけないのです。
クイーンやマドンナといった一般の楽曲からつくられている音楽を使う限り、今回の対象になります。プレコリオ系の音楽については音源がどこから使われているか、というところまで本来なら突き止めることが必要でしょう。作曲者が、「このエクササイズのために作曲してほしい」と依頼されてつくり、録音さ
れプレスされて、作曲者も演奏者も「これはみんなの前で指導するためにつくったものですから、皆に配信します」というように、全部了解済みの音源であれば、今回の対象にはなりません。もし、お使いの音源を追求してくだされば、JASRAC管理の音源ではない可能性もあるかと思います。
「当社では、当社独自のエクササイズ音楽をつくっている」というクラブの例がありました。しかし、CDをつくってもらっている専門の音源製作会社に確認したところ、その音源は、海外でつくられた一般の楽曲からもってきたものでした。そうなると、そのエクササイズのためだけに作曲され、演奏され、複製されたものではないわけです。ですから、これはJASRAC管理下の曲ということになりました。このように、「この曲は?」というのがあったら、尐し突き詰めて調べてみるとよいでしょう。
そのほかに、トレーニングマシンなどを使用しているときにお客さまが音楽を聞いている場合があると思いますが、これは“私的利用”になるため対象外です。
使用料について
「使用している音楽の分量で使用料は変わらないのか?」というお問い合わせも多く受けました。1日にいくつものレッスンで何十曲も使用しているクラブと、プール2コースぐらいを使って1週間に1回だけアクアビクスのレッスンをやっているクラブ、その2つに同じ料金表が適用されるのか?ということです。確かにそうですが、答えは、「適用されます」。理由は、後ほどお話ししましょう。
音楽使用面積の計算については、「広い体育館の一部を使用している場合は?」というご質問がありました。これは参加者が通常使用している面積を大体で結構ですので、計算してみてください。広い体育館の全面積で計算することはありません。
例えば6コースあるプールで、全部に広がってアクアビクスを行っているクラブは尐なく、通常そのうち2、3コースだけを使用していたりすると思います。そういう場合も、「通常これぐらいの範囲でやっています」という面積をご自分で判断して計算してくださって結構です。
次に、使用料規定の表ですが、この表はすでにお手元に届いているかと思います。この表では、音楽を使用する面積の合計が横軸に設定され、月会費が縦軸に設定されています。
それぞれの対象が交わるところが、そのクラブが支払うべき1ヶ月の音楽使用料です。しかし、指定管理などでは「この月会費を払えばいつでも使い放題」というような制度ではなく都度料金ですよね。例えばスイミングスクールのアクアビクスコースなども「いつでも使えます」というものではなく、週1回来る日が決められている場合がありますね。そのような場合は月会費の一番安いところ「月会費が5,000円まで」の部分を見てください。
次に特例についてご説明します。使用料計算の特例ということで、「面積が、66㎡以下のところにおいて演奏が行われる場合」というのがあります。例えばプールでいうと、プール1コースは通常長さ25m、幅1.2mであるとすると、1コース30㎡です。2コース使えば60㎡、その2コースだけでアクアビクスをしている場合、使用面積は60㎡以下になります。そのような場合は、この使用料規定表の面積50坪までのところ、そしてそ
のクラブ自体の月会費額が交差する部分の金額の、さらに半額になります。
申込書について
最初に交わす契約申込書については、複写用紙になっています。これは、基本的に施設がいくつあっても1社につき1枚となっています。例えば施設が5つあった場合は、それぞれの施設の音楽使用面積を求め、その5施設の総合計金額を算出し、記入してください。支払方法欄には「預金口座振替」「その他」とあります。口座振替については、この許諾申込書の下に口座振替用紙がついていますので、そちらを使ってください。反
対にJASRACから請求書をもらい、それから支払いをしたいという場合は、「その他」のところに○をしてください。
利用状況届出書のほうは、原則1施設1枚になります。3クラブあれば3枚ですね'FIA加盟企業の場合、複数クラブあったときは、エクセルファイルで一括記入です(。施設の名称や住所、スタジオの面積などを記入してください。利用方法のところは、CDを使うということはレコード演奏になります。書き方については資料をご参照ください。これらの2つをJASRACに送ってください。
JASRACとの話し合いについて
FIAとしてもこの話が最初に国を通してJASRAC側から申し込まれた際に、「何をいまさら」「まずは著作権について納得いくまで説明してもらおう」など、いろいろな意見がありました。そして、著作権問題に詳しい弁護士に相談しました。すると、「もう昭和45年当時と違い、“正当な著作権者の権利は保護されるべきである”、つまりは“正当にお金を支払うべき”という考えが社会で醸成されてきており、国もそういう方向である」と言われました。社交ダンス教室が著作権の支払い義務を巡って裁判を起こしたことがありましたが、実際に判例はそのような方向で出てしまっているのです。そこで、「支払いの是非を争っても結局はさかのぼって徴収ということになる。それであれば、払う・払わないを交渉するのではなくて、条件を決めよう」ということになり、JASRACと折衝を続けてきました。使用料規程が面積と月会費で決まっていることについては、「会員が多い、尐ない、クラブが広い、狭いなどは関係しないのか?」という意見もあると思います。本来、音楽の使用料は使われた音楽ごとに払われるべきものであり、誰の、なんという曲をいつ演奏したか、ということを個別に管理することが必要です。実際にカラオケ業界ではそのように管理しています。
それは、カラオケ業界では通信システムによって全曲個別管理が可能だからです。対して放送局は売り上げ対比、利率性方式がとられています。それは多様な楽曲の使用で個別管理が困難なためです。
フィットネスクラブでも、クラブごとに会員数やクラス数など多様であり、さらに指導では細切れに多数の曲を使用していること、また使用実績は1日何十曲にもおよび、個別管理は難しくなります。しかし“売り上げ対比制”をとったときには、企業として売り上げ実績や在籍会員数ごとの実態の数字、経営の数字を、JASRACという外部に報告することが可能か、ということが検討されました。
そして最終的に、売り上げや会員数などの実績数値の報告は困難であること、そして全曲報告の手間は非現実的である、と判断して報告もしないかたちで課金システムをつくる方向性を決め、月会費と利用面積から算出することに決定しました。このようにいろいろな経緯を経て、この料金表が適用されたということを理解していただけたら嬉しいです。
では、これよりご質問をどうぞ。
Q(我々は指定管理者として市の体育館などを管理し、レッスンを行っています。その場合は支払い義務があるのですか?
また、支払い義務がある場合、それはクラブ側が払うのか、当該施設を管理している市が払うのでしょうか?
A(公共だからということで免除にはなりません。しかし、支払いについてはJASRACとしては、「委託者が払っても受託者が払ってもどちらでも結構ですから、とにかく払ってください」という考えです。FIAに加盟してくださっている企業さまの例からすると、「多くの場合は市や県などとやりあっても、結局当社に押し付けられてしまうんです」というのが実情のようです。
Q(ヨガスタジオやコンビニフィットネス、ピラティススタジオについてはどのような話になっているのでしょうか?
A(そのようなところにも、おそらくすでにクラブにお送りしたものと同じ資料が届いていると思います。音楽使用が20坪以下、66㎡以下の面積の場合には、料金表の半額とする、という特例をこの料金表に盛り込んでいる理由は先のようなサーキット型の施設なども考えに入れているからです。
Q(団体割引というのはFIAに加盟していれば、の話なのですね?
A(はい。団体割引はFIAとJASRACが密約を交わしたわけではなく、JASRACの料金徴収の内規のなかに、もともと「大口団体割引」というのがあるのです。対象は「全国の25都道府県以上にわたって組織されていること」、「業種の利用者'お客さま(の1/3以上を管理している団体が対象」となっています。たまたまFIAがそれに合致する団体であったわけです。JASRAC側の事務手続き作業がその団体によって大幅に軽減されるた
め、20%の割り引きをするという規程が適用されます。
以上
ランキング
- 1. 【法律相談QA】年一括払い契約の途中退会について
- 2. 【The Pulse】昼間のワークアウトは生産性を向上させ 労働をより幸福にする(2013/8/1)
- 3. フィットネスクラブで使用する音楽の使用料 の支払いについて
- 4. 比較用 テストページ
- 5. 【事例紹介】消費者団体からの申し入れ・問い合わせの件(2013/8/1)
運営事務局おすすめ
- 【事例紹介】消費者団体からの申し入れ・問い合わせの件(2013/8/1)