一般社団法人 日本フィットネス産業協会

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WTP(支払意思額)と 総合型クラブの提供価値の再定義 (前編)

FIA-NEWS9月号(2026/9/18) TOPICS記事より

WTP(支払意思額)と 総合型クラブの提供価値の再定義(前編)

2026年7月9日(木)13:00〜14:30

 

《パネリスト》
妹尾 有信 氏
株式会社ティップネス  経営マネジメント本部シニアコーディネーター
上柿 仁司 氏
コナミスポーツ株式会社 執行役員 施設事業本部 本部長
伊藤 裕久氏
ベストパートナー株式会社 常務執行役員

《ファシリテーター》
松村 剛
一般社団法人 日本フィットネス産業協会 事務局長

 

フィットネス業界では、24時間ジムやブティック型などの業態が急速に拡大している。
その一方で、総合型クラブは施設に関わるコスト上昇や人材不足など、さまざまな課題に直面している。
総合型クラブが持つ本来の価値とは何か。
コロナ禍を経た顧客ニーズの変化と、これからの総合型クラブのあり方について考える。今回は、その前編である。

 

松村 皆様、本日はお忙しい中、私ども日本フィットネス産業協会のセミナーにお越しいただき、ありがとうございます。「WTP(支払意思額)と総合型クラブの提供価値の再定義」をテーマに、90分のセミナーを進めていきます。WTPは「Willing to Pay」の略で、「支払い意思額」を意味します。ハードであれば機能、ソフトやサービスであれば質やクオリティについて、「この機能、このサービスなら、この価格で納得して払える」と感じていただける金額を、WTPと定義しています。本日は、フィットネス事業におけるWTPを軸に、皆さんと考えていきたいと思います。

 このセミナーの背景には、私どもFIAが昨年1年間にわたって実施してきた会議があります。理事企業だけではなく、正会員企業各社から事業責任者レベルの方にお集まりいただき、事業責任者会議という会議体を設けて議論を重ねました。ここでいう事業責任者とは、店舗運営全体を把握し、さまざまなプロセスを経ながら事業に携わっている方々です。その会議では、今後FIAとして取り組むべき課題やキーワードを抽出し、提言としてまとめました。今日のお話にも、その取り組みの中で出てきた議論や情報が多く盛り込まれています。本日ご登壇いただくお三方は、その事業責任者会議に積極的に参加いただいた皆様です。そうした背景を踏まえて、今日は議論を進めていきます。

 本日ご登壇いただくパネリストの方々をご紹介します。コナミスポーツ株式会社執行役員施設事業本部本部長の上柿仁司さんです。よろしくお願いいたします。続いて、昨年の事業責任者会議で議長を務めていただいた、株式会社ティップネス経営マネジメント本部シニアコーディネーターの妹尾有信さんです。よろしくお願いいたします。そして、三重県からお越しいただいた、ベストパートナー株式会社常務執行役員、ベスパスポーツクラブを運営されている伊藤裕久さんです。よろしくお願いいたします。では、簡単に自己紹介と会社紹介をしていただきます。

 

上柿氏とコナミスポーツの紹介

上柿 上柿です。よろしくお願いいたします。自己紹介と会社紹介をさせていただきます。現在49歳で、1999年に旧ピープルに入社しました。その際、現在FIA専務理事を務める吉田さんに最終面接をしていただき、入社しました。その後、クラブのフィットネス、スイミング、スタジオなどの現場業務を5年ほど経験し、27歳で支配人を務めました。その後は店舗、本社業務、兵庫・関西エリアの店舗統括、経営管理、法人営業など、さまざまな仕事を経験しました。もともとは、スポーツクラブでしっかり指導したいという思いで入社しました。振り返ると、さまざまなキャリアを経験できたことが、現在の自分を形づくっていると感じています。2022年に執行役員となり、現在はコナミスポーツクラブブランドの事業責任者を務めています。昨年からはFIAの事業責任者会議のメンバーとして、さまざまな議論にも参加してきて、今回、このような場で皆様とお話しする機会をいただきました。

 続いて、会社について簡単にご紹介します。コナミスポーツ株式会社は、「スポーツの力で地域課題を解決し、人に笑顔を、街に活力を届ける」をミッションに事業を展開しています。

 現在、全国で442施設を運営しています。直営事業であるコナミスポーツクラブに加え、近年は「ピラティスミラー」というピラティスのジムも展開しており、合わせて200を超える施設があります。そのほか、官民連携による受託施設も200を超え、全体で400を超える施設を運営しています。近年の業績についてはご覧いただいている通りですが、コロナ禍から徐々に回復し、事業としてもしっかり回復してきたと感じています。今期も、皆様と同様に、目標達成に向けて取り組んでいます。セミナーのテーマに沿って、皆様と有意義な議論ができればと思います。よろしくお願いいたします。

上柿 仁司氏 コナミスポーツ株式会社 執行役員 施設事業本部 本部長

 

 

妹尾氏とティップネスの紹介

妹尾 続いて、ティップネスの妹尾から、自己紹介と会社概要をご説明します。今日リハーサルをしていたら、こちらの顔写真について「AI加工されているのではないか」という疑惑が出まして(笑)。実物と見比べていただければと思います。決してそのつもりはなかったのですが、どうやらそういう処理になっているようです(笑)。

 私がこの業界に携わるようになったのは1985年、20歳のときです。九州のエグザス博多、現在のコナミスポーツさんの前身にあたる施設で、学生時代にアルバイトを始めたのが、この業界に入ったきっかけです。当時のエグザスの九州ブロック長が、FIA専務理事の吉田正昭さんでした。それ以来、40年にわたってお付き合いいただいています。その後、スポーツ機器のセノー(株)で民間フィットネスクラブ向けの営業を担当し、2002年にティップネスへ転職しました。ティップネスでは24年、現在で25年目になります。これまでさまざまな事業や営業部門に携わり、直近では10年間、10期にわたって執行役員を務めました。今年6月、社長の清水から声をかけてもらい、「妹尾くん、定年退職お疲れ様でした。そして10期の執行役員、お疲れ様でした」と言われて、ようやく肩の力が抜けました。現在は、比較的自由に仕事をさせてもらっています(笑)。

妹尾 有信氏 株式会社ティップネス 経営マネジメント本部シニアコーディネーター

 ティップネスで最も長く経験したのが営業推進部です。企画部門と店舗の営業部門の間に立ち、全社施策を推進する部署です。毎月の支配人会議や四半期・半期の店舗戦略検討会などをマネジメントし、全体の営業数値についてPDCAを回し、全社予算の達成に導く役割を担っていました。そのため、会費単価、会員数、収入の関係については、会社全体だけでなく個々の店の状況も見ながら7年間にわたってマネジメントしてきました。そうした経験も踏まえて、お話ししたいと思います。当時はキャンペーンの割引価格をいくらにするか、「廉価版の会員を導入すれば、新たな需要を掘り起こせ、会費収入が増えるのではないか」といった、数字を重視した考え方が中心でした。お客さまにとっての価値をどう高めるかという視点が不足していたと、今日このタイトルを見て改めて感じています。私たちもまだ課題はありますが、自戒の念も込めて、これからどうあるべきかを皆さんと一緒に考える場にできればと思います。

 続いて、ティップネスの沿革を簡単にご説明します。ティップネスは1986年に設立され、1987年に渋谷店を開業しました。その後、さまざまな合併を経ながら、複数のブランドを展開してきました。当社のアイデンティティとしては、都心型のスタイリッシュな総合型クラブ、洗練された広告クリエイティブ、そして最先端のグループエクササイズやビジネスモデルといったものが挙げられます。こうしたものは、当社の従業員の中にも脈々と受け継がれていると考えています。一方で、コロナ禍によって大きな打撃を受け、コロナ前に計画していた3店舗の新規出店以降、なかなか新たな取り組みを進められない状況が続いていました。そうした中、昨年4月に元々草加店があったビル内に「MiiBA」という新しい24時間業態を開業しました。一般的な24時間ジムでは、男女比が8対2や7対3程度になることが多いと思いますが、MiiBAは男女比がほぼ5対5となっています。「カフェ時々ジム」をコンセプトに、カフェをメインに据えたジムを展開しており、これまでとは異なる新しいターゲット層に支持されるブランドになったと感じています。その後、「WELL HACK GYM」という新たなブランドにも取り組んでいます。こちらは、日本テレビ放送網を中心とする当社の親会社日本テレビ放送網が経営主体のビジネスですが、当社は業務委託を受け、ブランドづくりから運営まで一緒に携わっています。WELL HACK GYMも、男女比は4対6程度で、若い女性というよりは、団塊ジュニア世代を中心とした、やや年齢層の高い女性にも支持されています。24時間営業でありながら、どちらかというとウェルネス寄りのジムという位置付けです。現在は、この2つの新たなブランドをどのように展開していくかを検討しているところです。また、先ほどのトップセミナーでも共創について話がありましたが、当社がこれまで約40年間にわたって培ってきたノウハウやコンテンツを、今後は同業の皆様にも提供していきたいと考えています。何かお困りのことがありましたら、ぜひお声がけいただければと思います。

 続いて、店舗網についてです。ご覧いただいている通り、当社は首都圏に約150店舗を展開しており、ファストジムを含めると、非常に首都圏に集中した店舗網となっています。裏を返せば、コロナ禍による打撃が大きかったということでもあります。地方に店舗が分散していないため、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の影響を強く受けました。そのため、総合型クラブの中でも、回復がやや遅れていたという認識です。日本テレビホールディングスの2025年の決算説明資料によると、まさに回復途上にあるという状況です。私からは以上です。ありがとうございました。

 

伊藤氏とベストパートナーの紹介

伊藤 初めましての方もいらっしゃると思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。本日はFIAの責任者会議のメンバーの一人として参加させていただいております。私自身、どのような立ち位置で参加すればよいのかと考えていましたが、基本的には地方の総合スポーツクラブの代表という立場になるのかなと思っています。私どもが事業を展開している伊勢市は、人口約12万人の地域です。そこに総合スポーツクラブが2〜3施設あるという、典型的な地方型の市場です。その中で、比較的規模の大きい総合スポーツクラブを運営しており、現在はコロナ禍からの回復に向けて、さまざまな取り組みを進めています。大手クラブのお二方と比べると店舗数も少ないですが、今日はさまざまなお話を伺いながら、私自身も皆さんからご意見やご感想をいただき、勉強させていただきたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

伊藤 裕久氏 ベストパートナー株式会社 常務執行役員

 それでは、少し自己紹介をさせていただきます。私の会社はベストパートナー株式会社で、三重県伊勢市に本店、いわば1号店を構えています。スポーツクラブ事業では常務執行役員を務めています。また、昨年、ベストパートナースイミングスクール津株式会社を設立し、そちらの代表取締役を務めています。こちらは後ほどお話ししますが、スイミングスクールのM&A事業として展開を始めたものです。その他の役職については資料に記載していますが、現在の活動の中心は、一般社団法人日本スイミングクラブ協会です。本部理事を務めるほか、泳力認定の委員長も務めています。泳力認定は、現在、受講者・合格者が10万人を超えている事業で、その委員長を務めています。実は、一般社団法人日本スイミングクラブ協会の中でも、最大の収益事業の一つとなっています。また、東海支部でも活動しており、機関誌の発行などにも携わっています。そのほか、日本民間教育協会にも所属しています。学習塾やスポーツなど、子どもたちの学びに関わるさまざまな事業者が参加している協会です。経済産業省や文部科学省などとも連携しながら、子どもに関わる事業を推進していこうという活動に参加しています。これまでの経歴については資料をご覧いただければと思います。

 では、当社について紹介させていただきます。当社は総合型スポーツクラブとして、25メートルプールを2面備えたスイミングスクールとフィットネスクラブを運営しています。スイミングとフィットネスの双方に力を入れている、併設型のスポーツクラブです。25メートルプールを2面備えている施設は、地方の総合型スポーツクラブとしては珍しいのではないかと思っています。1989年にスポーツクラブをオープンし、現在の会員数は資料に記載しているとおりです。その後、2002年に「松阪店」を開業しました。名古屋方面に向けて一つ事業エリアを広げた形で、こちらでも大型の総合スポーツクラブを運営しています。そして、先ほどお話ししたスイミングスクールのM&A事業として、昨年9月には津市のスイミングスクールを事業承継しました。47年間続いてきたスイミングスクールを引き継いだものです。さらに今年に入り、同じく大型店舗の隣に「川合町店」を開業しました。この事業承継については、もともとの会員数が非常に少なかったため、私自身もかなり悩みました。ただ、M&Aにはさまざまな形があるのだと実感しました。建物が賃貸だったため、事業として成立する可能性があると判断し、川合町店を某スイミングスクールから承継することになりました。

 また、当社のベストパートナー株式会社では、スポーツクラブ以外にも、ガソリンスタンド、農業、飲食など、さまざまな事業を展開しています。細かな話になりますが、もともとはガソリンスタンドが当社の本業でした。現在はそこから事業領域を広げ、スポーツクラブをはじめとする複数の事業を展開しています。詳しい内容については、資料のトピックをご覧いただければと思います。本日は、私自身も皆さんのお話を伺い、勉強させていただきたいと思っています。そのような思いで参加させていただいておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 

松村氏の紹介

松村 はい、ありがとうございました。それでは進めさせていただきたいと思います。ちなみに、私も少しだけ自己紹介をさせていただきます。1分ほどですが、年齢が分かってしまうかもしれません。私は1980年代に、ユナイテッドスポーツクラブエグザスという店舗でジムインストラクターとしてキャリアをスタートさせました。当時は会員数が7,000人もいる、今では考えられないほどの超満員のスポーツクラブでした。そこでインストラクターとして経験を積み、その後、西武百貨店が運営していたリボン館というスポーツクラブに移り、指導や法人営業、個人営業などを経験し、その後、AFAA JAPANというフィットネスインストラクターの資格認定と教育を行う団体、そしてメーカー企業における健康関連の新規事業参加等を経て現在に至ります。

 まず最初に、現状について問題提起をさせていただきます。今回のテーマは「価格価値」という観点から、総合型クラブの価値を改めて見直してみようというものです。そのためには、まず我々が現在どのような課題を抱えているのかを整理し、その上で、今後どのように価値を提供していくべきかを考える必要があります。最初の前段では、総合型クラブにとって少しネガティブに聞こえる話も出てくるかもしれません。その点はご了承いただければと思います。

 

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