一般社団法人 日本フィットネス産業協会

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被災者のメンタルに配慮した運動指導

東日本大震災 被災者支援講習会(復興支援チャリティ講習)より
医療法人社団清心会 藤沢病院 企画調査室長 石井 千恵先生(当時)

運動を通して被災者と関わることにより、心理的な防衛を和らげ、身体と同時に心をときほぐすことができます。そのためにはコミュニケーションのスキルが不可欠です。災害発生後の時間経過にそった心理的プロセスやストレスの状態を冷静に見極め、被災者に“心”を届ける支援をしましょう。

支援する側の基本的な心がまえ

被災者の運動指導に当たる前にまず確認しておいていただきたいのが、支援者としての基本的な心構えです。被災者は決して無力な存在ではないということを、心にとめて接してほしいと思います。支援を与える側、受ける側といった構図となり、支援をする側が一方的な「ケアギバー」になってしまっては、被災者のプライドが傷つけられてしまいます。
外部者としての関わりで大切なのは以下のようなことです。
◎おだやかに、ていねいに接し、相手を尊重する。
◎忍耐強く関わる。
◎安易でない共感の姿勢を示す。
◎相手の怒りに対しても心を平らかにして、一定の距離を保ちながら接する。
◎無力でしかない自分を知る。
自分自身がパニックにならないようにするうえでも、こうした態度は大事です。普通の運動指導の場面であっても、対象者から理不尽な怒りをぶつけられることがあるかもしれません。今回の被災者の方々は理不尽と一言で片づけてしまうことのできない、やり場のない怒りを心に抱えていらっしゃいます。そういった感情の表出として怒りをぶつけてくるかもしれません。巻き込まれないように注意しながら、被災者に対してオンリーワンの人として、心して関わってください。そこでは、無力でしかない自分を認識する謙虚さも必要です。
大切なのは“心を届ける”ということを運動指導において行うことだと思います。心理的な防衛を和らげ、身体から心をほぐすというのは二次的なことかもしれませんが、運動を有効活用できると、私は実践を通して感じました。たとえば、ストレス緩和として、うつ状態や認知症への対処として、あるいは母子支援として… などです。
具体的には、ストレッチ、エアロビックエクササイズ、筋コンディショニング、リラクセーションなどです。皆さま方それぞれがもっているノウハウを、その場に応じて、相手に応じて、やっていけばよいと思います。大事なのは、運動指導を通じて笑顔の時間を増やしてもらうことです。以前、ある生命保険会社が行った調査によると、人が笑顔ですごす時間は1日平均2 時間だといいます。運動指導をさせていただくことによって、瞬間的にでも笑顔の時間が増えること、少しでも微笑みを取り戻していただきたいと願っています。

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