「健康経営」講座 前編 実は誤解の多い、健康経営
FIA-NEWS12月号 (2024/12/17)
「健康経営」講座 前編
実は誤解の多い、健康経営
あらためて学ぶ健康経営の基礎知識 その①
企業の「健康経営」への取り組みが広がっている今日において、運動習慣の定着化のサポートという健康の維持・改善に対し、本質的な貢献をなし得るフィットネス。しかし、その一方で、「健康経営」に対する認識の誤りも少なくないようだ。そこで、今回のトピックスでは、「健康経営」の本質を正しく理解するための講座とした。解説をお願いしたのは、フィットネス事業者として健康経営サポートの領域にいち早く取り組んでいる(株)ルネサンス、執行役員の樋口毅氏である。NPO法人健康経営研究会の理事として日本の健康経営を牽引すると共に、健康長寿産業連合会、及び健康経営会議の事務局長を務める樋口氏に、その現状と課題、そして今後の健康経営という観点からお話をうかがった。今回は、その前編である。
樋口 毅
株式会社ルネサンス 執行役員健康価値共創部 部長
NPO法人 健康経営研究会 理事
公益財団法人 健康・体力づくり事業財団 理事
健康長寿産業連合会 事務局長
健康経営会議実行員会 事務局長 他
健康経営の理解を深めよう
企業において「健康経営®」への取り組みが広がっていく中、私たちフィットネス関係者にとって、健康経営は新たな市場として、相性のよいテーマとして受け入れられているのではないでしょうか。ところが、その一方で、なんとなく言葉だけが独り歩きしているような気もしています。そこで、この機会に「健康経営」とはそもそも何なのかについて、皆さんと一緒に考えてみたいと思います。
まずお伝えしたいことは、健康経営は、経営戦略の側面が強いということです。したがって、今回は、健康経営関連サービスを開発してマネタイズするツールのお話しではなく、新たなイノベーションを起こす戦略着想としての健康経営について、お話ししたいと思います。
今後、少子化・高齢化が進む中では、従前からのフィットネスクラブ事業だけを続けていくだけでは、持続的な成長が成り立たなくなることが予測されます。だからこそ、健康経営を戦略テーマとした事業の変革が必要とされているということです。人口が、今より15%、20%、30%と減少していく中で、今後もフィットネス人口が固定で5%から7%の枠の中で参加している場合には、会員減少の影響が必然的に大きくなります。
このような状況下において、現在、ルネサンスでは、「生きがい創造企業」としての理念のもとに、「人生100年時代を豊かにする健康ソリューションカンパニー」を中長期のビジョンとして掲げ、スポーツクラブ事業を基点としながら、地域の健康づくりや、職域の健康づくり、そして介護予防や介護リハビリ事業を展開しています。今後の事業展開としては、これらの事業を複合型の事業として融合しながら、商圏の地域において、必要とされるクラブづくりを目指しています。
このように社会の健康を事業として取り組むルネサンスにとっての健康経営は、サービス開発だけではなく、持続的な成長に向けて、社会の利益を生み出すことで、企業の利益を生み出すための戦略論の1つです。また事業の変革に必要となる人資本への投資を通じた、企業風土の醸成を目的とするコミュニケーション戦略でもあります。ところが、フィットネス産業に関わる多くの人にとっての健康経営は、企業に運動プログラムや運動指導者を派遣する事業だけが目的としてのみ捉えられていることが実情のように思います。そこで、改めて、いくつかの資料を提示しながら、健康経営の本質についてお話していきたいと思います。
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