一般社団法人 日本フィットネス産業協会

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支配人(現場責任者)が語るコロナダメージからの店舗業績回復について

FIA-NEWS10月号 (2024/10/15) 

支配人(現場責任者)が語るコロナダメージからの店舗業績回復について

コロナ感染拡大は沈静化し、社会全体が回復基調にあるが、フィットネスクラブの現場ではまだまだコロナダメージが色濃く残る。スポルテックFIAセミナーを締めくくる第3弾は、コロナのダメージを乗り越え、店舗業績回復を実現した支配人(現場責任者)たちによるパネルディスカッション形式のセミナーである。

左から小嶋氏、中曽根氏、佐々木氏

<パネリスト>
佐々木 大斗氏 アイレクススポーツライフ(株)アイレクススポーツクラブGRANDE+24支配人

中曽根 有起(株)ルネサンス スポーツクラブ&スパルネサンス経堂 支配人
小佑   佑基氏  スポーツクラブNAS(株)スポーツクラブNAS東大宮店 支配人

<ファシリテーター>
韮沢 靖彦 (一社)日本フィットネス産業協会 FCM事務局統括マネージャー

 

韮沢 皆さん、こんにちは。本日はお暑い中、多くの方にお集まりいただき誠にありがとうございます。今から90分間、現場の支配人の方々に「コロナダメージからの店舗業績回復」について、様々な角度からお話をしていただきたいと思います。

 まず、当セミナーの特徴を簡単にご説明いたします。タイトルにもあるように、コロナによって、国内の経営環境は大きく変化しました。特にフィットネスクラブに対しては大きな逆風を受けることになり、それに伴って業界の多様化が急速に進みました。その一つがIT技術の進化によるインフラ化であり、一方で、人件費をはじめ、エネルギーコストの高騰に対する課題も抱え、特に支配人の方々には本部とスタッフとの狭間で大変なご苦労をされたのではないかと推察いたします。

 事業を継続・発展させるためには様々な戦略が提起され、それを現場の施策に落とし込んでいくわけですが、その具現化は口で言うほど容易ではありません。そこで求められるのが現場のマネジメント力。すなわち、「戦略×現場力(実行力)」がいかんなく発揮されてこそ、目標は達成されていくもの。果たして、現場のリーダーである支配人の方々がマネジメント能力をいかに発揮して、この難局を乗り越えてこられたかについて、フィットネスクラブマネジメント(FCM)普及・啓発に努めるFIA検定事務局が主催して、本セミナーを開催させていただきたいと思います。

 本日、ご紹介するクラブは3店舗です。アイレクススポーツクラブ GRANDE、スポーツクラブ&スパルネサンス経堂、そしてスポーツクラブNAS東大宮新館で、いずれも複合型の店舗になります。

 最初のテーマとさせていただくのは、「どのようにして収入増を図ったか」、また「どのように支出をコントロールしたか」についておうかがいしたいと思います。まず、アイレクスの佐々木支配人よりお願いいたします。なお、ここでお話しいただく内容は、今年3月時点での役職となることをあらかじめお断りしておきます。では佐々木支配人、よろしくお願いします。

 

「収入増」および「支出のコントロール」の施策


佐々木 大斗氏 アイレクススポーツライフ(株)アイレクススポーツクラブGRANDE+24支配人

 

佐々木 アイレクススポーツライフ株式会社、アイレクススポーツクラブGRANDEで支配人をしておりました佐々木大斗と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

 当社の場合、まず在籍会員数を見ると、コロナ前を100とした場合、現在は85%という状況でありまだ戻り切っていません。しかし、営業利益はコロナ前を上回ることができているというのが現状です。コロナ禍においては来館していただくこと自体が難しい状況であったことは言うまでもありません。その後、復活途上においては、興味・関心を持っていただいた見込み客の方々を大切にし、いかに入会していただくかという点に特に重きを置いて取り組んでまいりました。そのための具体策について、現場視点でいくつかご紹介できればと思います。

 まず、入会獲得のために、見学体験申し込みはすべてweb受付で統一いたしました。その理由は、お客様の住所・電話番号などをすべてリスト化していきたいという狙いによるものです。それによって、仮にその場で入会に至らなかったとしても、後日またアプローチができるというような体制を整えることに取り組みました。その他、毎月のルーティンとして、クラブにいる会員様に対しての紹介アプローチという点についても実行してまいりました。

 中には問い合わせ段階でコンタクトが取れないという方もいらっしゃいましたが、そういう方に対しても、取れないから仕方ないということではなくて、コンタクトできるまで粘り強く追う、と。その結果、当クラブを訪れていただいた方には可能な限り入会していただくという点については大きな成果が出たのではないかと感じています。

 その中の取り組みの一つとして、見学・体験のオペレーションの若干の見直しを図りました。当社では全店ほぼ同じような内容で実施をしていたのですが、それをもう一度見直すことによって、見学対応の底上げ、クオリティの底上げをしていった、と。そうすることで、セールスエースが育成できます。エースがいれば、シフトを調整しながら、見学や体験に来られたお客様には、そのエースが即時に対応できるよう、シフト体制の整備についても徹底して行ってまいりました。

 また、その場では結論が出ず、即入会にならなかったという場合には必ず体験の提案をさせていただいています。入会に至らなかったので、そのままフェードアウトしてしまっては、こちらから縁を切ってしまうことになる。そこで、「今度はいついつに体験しませんか?」というようなオファーをしながら、次にまた来館日程のお約束をさせていただきながら入会につなげていくというような取り組みも店舗レベルでは実施しています。

 そして、体験できた方については、ただ体験していただくだけではなく、体組成測定を実施し、最適なフォロー&クロージングができるように体験者情報共有シートを作成し運用してまいりました。すなわちニーズや目的などについて、その場にいるスタッフ全体で共有しながら、いつ誰がフォローしても、お客様のニーズに沿ったご提案・ご案内ができるというような体制を整えていったということです。

 こちらに関しても、web化に統一したことによって、アンケート結果を簡易管理システムに蓄積していくことができるということ、またスプレッドシートなどを活用しながら即時、情報を更新し共有をしていったことが非常に効果的だったと思います。

 しかし、そこまでしても残念ながら入会に至らなければ、お礼のメールをお送りし、後日また入会につなげていくという芽を残しておく。その際、お礼のメールはシステマティックに定型文をお送りするのではなく、個別性を重視しながら、そのお客様に合ったメール内容をお送りするということにも取り組んでいます。

 もう一つの取り組みが再入会のアプローチです。すなわち、コロナ禍において残念ながら離脱をしてしまうお客様もいらっしゃいましたので、その方たちに対してもう一度再入会していただくというアプローチにも努めています。愛知県豊川市という地域柄、お客様同士のつながりが非常に強いということもあり、今いる会員様に退会した友人、ご家族を連れ戻していただこうという発想のもと、『再入会応援キャンペーン』といったポップなども使いながら、お互いのメリットとなるような+αの特典を付与するといった取り組みも行ってまいりました。

 加えて、当クラブは開業から15~16年を経た店舗でしたので、昔の会員様だとメールアドレスの取得ができていないというケースもあったので、SMS(ショートメッセージ)を活用しながら送っていくということも新たな取り組みとして始めています。獲得単価にすると、大体一人あたり5,000円弱ぐらいで再入会の獲得ができたので、非常に効果が高かったものと感じています。

 全体を通した成果としては、見学体験の入会率についても向上させることができ、コロナ前を超える入会者の獲得が視野に入りつつあるところです。最低でも入会率80%というのが当社のラインとしてありますが、当クラブの場合は、それを上回るような入会の獲得向上がこの取り組みを通じて達成することができました。また、再入会のアプローチについてもコロナ前が18%だったところに対して、およそ30%近くまで高めることができたことも、ある意味、このアプローチ法の大きな成果ではないかととらえています。

 

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