フィットネス産業、これからのための 新たな経営戦略を考える

FIA-NEWS9月号 (2024/9/13) 

フィットネス産業、これからのための新たな経営戦略を考える

業態の多様化が急速に拡大するウェルネス産業は、健康づくり、美容、レジャー、マインドフルネス、リカバリーなどあらゆる産業と繋がり、世界のキーワードとなってポストコロナの成長産業となっている。

 本セミナーでは、FIA加盟企業の各社代表の方々にご登壇いただき、これからのフィットネス産業の発展にかかわる課題発見や課題解決、あるいは新たな事業領域の創出などに関して様々な視点で掘り下げる。日本のフィットネス産業が次のステップに向けて大きく成長するための道筋を指し示すヒントとなれば幸いである。

左から山形氏、小林氏、岡部氏

<パネリスト>
岡部 智洋氏 (株)ティップネス 代表取締役社長 

小林 利彦氏 野村不動産ライフ&スポーツ(株) 代表取締役社長
山形 利一氏 (株)オークスべストフィットネス 代表取締役

<ファシリテーター>
松村 剛 (一社)日本フィットネス産業協会 事務局長

 

松村 皆様、本日はお忙しい中、私ども日本フィットネス産業協会がご提供させていただくセミナーに足をお運びくださりありがとうございます。「フィットネス産業、これからのための新たな経営戦略を考える」というテーマで、これから90分間のセミナーを進めてまいりたいと思います。

 まず、本テーマの背景について簡単に振り返ってみたいと思います。帝国データバンクによると、2020年以降、コロナ禍で大きく落ち込んだフィットネス市場は、全体では過去最高水準の規模となった2019年に比べて、9割前後回復しているという分析をしています。店舗数も全体では大きく増えています。ただ、その実態はというと、どちらかといえば低価格ジムに関心が移っているのではないかということとも大いに関係していると考えられます。

 一方、現在、フィットネス産業の根幹部分を支えている総合業態においては、コロナ禍以降のエネルギーコストの高騰に代表される様々なコストアップなども影響して、全体的にはやはりまだまだ厳しい状況にあるのが実情ではないかと考えられます。そこで、コロナ禍前のやり方を見直して、新しいアプローチを模索したり、あるいは既存の経営資源を活用しつつ新しい事業領域の取り組みにチャレンジされているというのが、現在の各社様の動向といえるのではないでしょうか。

 本セミナーでは、そういった多様化するフィットネス市場の中で新たな成長戦略を模索されている代表的な企業、ティップネス、野村不動産スポーツ&ライフ、そしてオークスベストフィットネスの3社様の取り組みについてご紹介させていただければと思います。 それではさっそく、進めさせていただければと思います。まず各社様の現況、そして本日のテーマに沿ったかたちで、現在の取り組み、さらに今後の戦略についてお話いただきたいと思います。それでは、ティップネスの岡部社長からよろしくお願いします。

 

ティップネスの取り組み


岡部 智洋氏 (株)ティップネス 代表取締役社長

 

岡部 ティップネスの岡部です。今日は皆さん、お暑い中、お集まりいただきありがとうございます。私もこの場ではジャケットを脱いでお話させていただきたいと思います。さて、このポロシャツですが、右胸に「渋谷区」、左胸には「TIPNESS」のロゴがあしらわれています。ティップネスは37年前、 渋谷で創業しました。渋谷生まれのティップネスです。実は先週、渋谷区民23万人の健康を一緒に考えていこうと、渋谷区と包括連携協定を結びました。またポロシャツの中央には大きく「3%→10%」、そして「Let‘s Move」とあります。要は動いて、フィットネスの参加率を3%から10%にしていこうという、今の私の思いがこのポロシャツに込められているというわけです。

 まず、簡単に私のプロフィールから紹介させていただきます。私は1989年、日本テレビに“箱根駅伝”に関わりたくて入社しました。中学・高校・大学時代は陸上部に所属していました。ただし短距離です(笑)。その後、2001年、長嶋監督時代の巨人軍に広報部として出向し、原監督時代には日本一を経験しました。その後、日本テレビへの復帰を経て、2014年にティップネスをサントリーさんと丸紅さんから100%株式取得した際、取締役として2年間ティップネスで頑張りました。このとき、素晴らしい仲間に恵まれ、ずっとティップネスやってくんだという思いはあったのですが、残念ながら日本テレビに再び復帰。コロナ禍においては、社外取締役として関わってきましたが、実際に仲間たちと一緒に取り組むことができなかったという忸怩たる思いもあり、4年連続赤字。そういった中で、昨年6月、代表取締役社長として戻ったという流れになります。

 現在は、日本テレビホールディングスの執行役員、日本テレビ放送網の取締役を務めながら、後ほど詳しくお話ししますが、桐蔭横浜大学の客員教授にも就任いたしました。というわけで、日本テレビホールディングス全体を上げて、このウェルネス事業に全力で取り組むことによって、「フィットネス参加率を3%から10%に」という目標に向かって微力ではありますが、尽力しているところでございます。

 プロフィールの流れで言うと、まず日本テレビで「スポーツを見る」、巨人軍で「スポーツをする」、ティップネスで「スポーツを支える」、そして桐蔭横浜大学では「スポーツを学ぶ」という貴重な経験を経て、次にいま考えているのは、「スポーツをつなげる」です。どういうふうにつなげていって、日本の社会課題を解決するかということを本気で考えているところです。

 1年前の前回のスポルテック(2023年8月2日)においては、フィットネス事業者による協調・共創を掲げ、「動く」――すなわち、ここにある「Let‘s Move」をキーワードに「フィットネス参加率を3%から10%に」を宣言しました。では、その結果はどうだったのか、というのが今日のお題になります。

 まずはリリースです。やはり何かが動いたら必ず発信したほうがいい。これは間違いないこと。発信することによって誰かしらがその情報を知って、さらにほかの人に声をかけていただいて……というふうに、ライク・ア・ローリング・ストーン、すなわち“転がる石”のごとくひたすら3%から10%に向かっていくという中で、リリースの年度別推移を振り返ると、2024年3月期までの52週で46本のリリースを展開していきました。

 ティップネスの事業としては、総合型フィットネス事業を本丸として、キッズを対象としたスクール事業、24時間ジムのファストジム事業、そしてウェルネス事業として健康ソリューションの展開です。さらに、先ほど申し上げた渋谷区との包括連携協定に代表される地域行政健康推進事業やオンライン事業に取り組んでいます。このような様々な事業の中からまた新たな提供価値の創出をしていくべく、引き続き積極的なリリース展開を繰り広げていきたいと思っています。以下に、発信していった事例をいくつか紹介したいと思います。

 

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