東京オリンピック開催に連動した フィットネス周辺マーケットのビジネスチャンス
SPORTEC2013~FIA特別シンポジウム~より
<講師>
早稲田大学スポーツ科学学術院 教授/(一社)日本スポーツツーリズム推進機構 会長/FIA理事:原田宗彦氏
(株)ルネサンス 代表取締役社長執行役員/FIA副会長:吉田正昭氏
(株)クラブビジネスジャパン 代表取締役/FIA理事:古屋武範氏
司会:(一社)日本フィットネス産業協会事務局長:松村剛
―2020年に東京オリンピック・パラリンピック開催が決定いたしました。これにより、フィットネス業界含め、さまざまな業界が波及効果に期待を膨らませていることでしょう。しかし、当然ながら何もせずにビジネスチャンスをつかむことはできません。前回の東京オリンピック開催の際には、スポーツへの参加率がそれまでの約20%から、開催後は60%まで一気に飛躍したようですが、恐らく現代においてはそこまでの影響はないでしょう。そうはいっても、アベノミクスによる成長戦略の効果も含め、未来は明るいと思います。このビジネスチャンスを逃さないためにどうすればいいのか、このセミナーでヒントを見つけていただければ幸いです。
それでは、まず原田先生からお願いします。オリンピック開催を契機として、フィットネスクラブ周辺のビジネス環境のトレンドが今後どうなるか、またそうしたなか、このフィットネスマーケットのなかにどんな可能性が見えてくるか、教えてください。原田先生は、オリンピック招致委員会のメンバーでもあり、さまざまな業界の方と交流を図られていると思います。そのような広い視野からご提案いただければと思います。
<原田宗彦氏>
環境異なる2度の東京オリンピック
最初に「オリンピックとは何か?」ということについて説明したいと思います。オリンピックとは、いろいろな可能性とリスクを秘めた世界最大規模のスポーツイベントです。
戦後、夏のオリンピックを2度開催するのはロンドンと日本だけです。ロンドンオリンピックは、第一回目が1948年に開催されたのですが、第二次世界大戦直後の混乱期ということもあって、参加国もたった50数ヶ国でした。そのため、本格的な規模で2度開催するのは東京だけということになります。
ここで、東京オリンピックを初めて開催した1964年と、近年でどれだけ環境が変化しているか、さまざまな数字から読みとってみることにしましょう(表 参照)。
この数字から、大きな変化が読み取れます。1964年当時はいわゆる「3C」といわれるクーラー・カー(車)・カラーテレビもありませんでしたが、今では当たり前になっています。
“オリンピック”は権利ビジネス
オリンピックは権利ビジネスの塊ですから、権利がないと何もできません。招致が決まったときに早速「おめでとうセール」をやろうとした企業があったのですが、JOC(日本オリンピック委員会)からすぐにストップがかかりました。五輪マークを使用できるのも、日本コカ・コーラ株式会社やパナソニック株式会社などのトップスポンサー企業だけです。オリンピックにかこつけて我々が何かしようというのはほぼ不可能なのです。IOC(国際オリンピック委員会)はブランド力の保護のためには手段を選びません。オリンピックを世界最高のブランドにするためにあらゆる努力を行っています。その甲斐あって、現在では五輪マークを見れば、老若男女問わず94%が認識できるブランドとなりました。これは、メルセデスベンツや赤十字の認知度をしのぐともいわれています。そのようなオリンピックには、約205ヶ国から10,500人の選手が参加するわけですが、そのほかに関係者や観光客を含めれば、2020年の東京には1日あたり60~100万人が訪れるのではないかといわれています。また、前年の2019年には、アジアで初めてとなる、ラグビーワールドカップが日本で開催されます。2019~2020年は世界から東京に注目が集まる年といえるでしょう。
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